リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

ピペラジン

別   名 ジエチレンジアミン、ヘキサヒドロピラジン
管理番号 341
PRTR政令番号 1-384(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 110-85-0
構 造 式 ピペラジン構造式
  • ピペラジンは、主に医薬品の原料やエポキシ樹脂硬化剤として使われます。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約7.3トンでした。すべてが事業所から排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。

■用途

 ピペラジンは、常温で白色の固体で、水に溶けやすい物質です。主に、医薬品の原料やエポキシ樹脂硬化剤として使われます。この他、かい虫やぎょう虫の駆除薬の原料、アンチモンや金などの検出試薬、ウレタンの合成触媒などに使われています。また、動物用医薬品として、馬、豚や鶏(産卵鶏を除く)を対象とした寄生虫駆除剤の原料に使われています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約7.3トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが電気機械器具製造業や化学工業などの事業所から排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。この他、金属製品製造業などの事業所から下水道へ約43トン、廃棄物として約16トンが移動されました。

■環境中での動き

 水中へ排出されたピペラジンは、容易には分解されにくく、腐植物質などを多く含む水中の粒子や水底の泥などに吸着されやすいと考えられます1)。大気中へは主に粉じんとして排出されると考えられますが、水と混和する性質をもつため、雨水に溶けて地表に降下すると考えられます1)。また、大気中では化学反応によっても分解され、1〜2時間で半分の濃度になると計算されています1)

■健康影響

毒 性 ピペラジンを扱う作業環境では、咳、呼吸困難、慢性気管支炎、ぜん息などの気道症状、皮膚炎の発生が報告されています1)
 イヌに13週間、ピぺラジン二塩酸塩を餌に混ぜて与えた実験では、血液中GOTの減少が認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は、体重1 kg当たり1日25 mg(ピペラジンとして)でした2)。この実験結果から、わが国の食品安全委員会は、2009年に、ピペラジンのADI(一日許容摂取量)を体重1 kg当たり1 日0.25 mgと算出しています2)

体内への吸収と排出 人がピペラジンを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、約25%は肝臓で代謝され、約20%が代謝されないまま尿に含まれて排せつされたり1)、胃液中で代謝されるという報告がありますが、詳細は不明です1)。また、男女5人のボランティアがピペラジン六水和物を含むシロップを口から摂取した試験では、摂取した量の15〜75%が変化しないまま尿に含まれて排せつされたと報告されています1)

影 響 河川、海域や水底の泥からピペラジンは検出されています。(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ピペラジンに関する信頼できる試験報告は非常に少なく、リスク評価はできなかったとしています1)

■生態影響

 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、ミジンコの繁殖阻害を根拠として水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.003 mg/Lとしています3)。この環境リスク初期評価が行われた時点では、河川や海域の水中濃度について十分な測定データが得られておらず、水生生物へ影響を与えるかどうかについて判断できていませんでしたが3)、最近の測定における河川や海域の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いものでした。
 なお、(独)製品評価技術基盤機構・(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、影響を適切に評価できる試験報告は得られず、リスク評価はできなかったとしています1)

性 状 白色の固体   水に溶けやすい
生産量4)
(2010年)
国内生産量:約700トン(推定)
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約7.3トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 64 大気 1
事業所(届出外) 36 公共用水域 99
非対象業種 土壌
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約4.7トン 業種別構成比(上位5業種、%)
電気機械器具製造業 61
化学工業 37
窯業・土石製品製造業 1
原油・天然ガス鉱業 0
倉庫業 0
事業所(届出)における移動量:約59トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 27 下水道への移動 73
業種別構成比(上位5業種、%)
金属製品製造業 73
化学工業 17
電気機械器具製造業 10
PRTR対象
選定理由
感作性
環境データ

公共用水域

  • 化学物質環境実態調査:検出数12/93検体,最大濃度0.000040 mg/L;[2008年度,環境省]5)

底質

  • 化学物質環境実態調査:検出数1/24地点,最大濃度0.07 mg/kg;[1986年度,環境省]5)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献