[この文書を印刷される場合はこちら(PDF)] 作成年: 2012年 |
ピペラジン
■用途ピペラジンは、常温で白色の固体で、水に溶けやすい物質です。主に、医薬品の原料やエポキシ樹脂硬化剤として使われます。この他、かい虫やぎょう虫の駆除薬の原料、アンチモンや金などの検出試薬、ウレタンの合成触媒などに使われています。また、動物用医薬品として、馬、豚や鶏(産卵鶏を除く)を対象とした寄生虫駆除剤の原料に使われています。 ■排出・移動2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約7.3トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが電気機械器具製造業や化学工業などの事業所から排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。この他、金属製品製造業などの事業所から下水道へ約43トン、廃棄物として約16トンが移動されました。 ■環境中での動き水中へ排出されたピペラジンは、容易には分解されにくく、腐植物質などを多く含む水中の粒子や水底の泥などに吸着されやすいと考えられます1)。大気中へは主に粉じんとして排出されると考えられますが、水と混和する性質をもつため、雨水に溶けて地表に降下すると考えられます1)。また、大気中では化学反応によっても分解され、1〜2時間で半分の濃度になると計算されています1)。 ■健康影響毒 性 ピペラジンを扱う作業環境では、咳、呼吸困難、慢性気管支炎、ぜん息などの気道症状、皮膚炎の発生が報告されています1)。 体内への吸収と排出 人がピペラジンを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、約25%は肝臓で代謝され、約20%が代謝されないまま尿に含まれて排せつされたり1)、胃液中で代謝されるという報告がありますが、詳細は不明です1)。また、男女5人のボランティアがピペラジン六水和物を含むシロップを口から摂取した試験では、摂取した量の15〜75%が変化しないまま尿に含まれて排せつされたと報告されています1)。 影 響 河川、海域や水底の泥からピペラジンは検出されています。(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ピペラジンに関する信頼できる試験報告は非常に少なく、リスク評価はできなかったとしています1)。 ■生態影響 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、ミジンコの繁殖阻害を根拠として水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.003 mg/Lとしています3)。この環境リスク初期評価が行われた時点では、河川や海域の水中濃度について十分な測定データが得られておらず、水生生物へ影響を与えるかどうかについて判断できていませんでしたが3)、最近の測定における河川や海域の水中濃度はこのPNECよりも十分に低いものでした。
注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。 ■引用・参考文献
■用途に関する参考文献
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