![]() [この文書を印刷される場合はこちら(PDF)] 作成年: 2012年 |
ヒドロキノン
■用途 ヒドロキノンは、水に溶けやすく、白色の固体です。19世紀後半ヒドロキノンの現像作用が発見されて以来、白黒写真の現像用として使われてきました。今日では用途が広がり、染料や顔料の原料、モノマーの重合抑制剤、ゴムの酸化防止剤などに使われています。また、全体の需要量からみればわずかですが、シロアリ防除剤、医薬品や化粧品などにも使われています。 ■排出・移動2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約110トンが環境中へ排出されたと見積もられています。すべてが、中小の事業所や下水処理施設、化学工業などの事業所から排出されたもので、ほとんどが河川や海などへ排出されました。この他、化学工業などの事業所から廃棄物として約63トン、下水道へ約7.1トンが移動されました。 ■環境中での動き 環境水中での動きについては報告がありませんが、化審法の分解度試験では、微生物分解はされやすいとされています1)。この他に、光分解や酸化分解によっても失われます1)。また、ヒドロキノンは、水中の土壌粒子などにある程度吸着されると推定され、一部は沈降して水底の泥に存在すると考えられます1)。 ■健康影響毒 性 動物細胞や動物を使ったいくつかの変異原性試験で、染色体異常などが報告されています1)。なお、発がん性については、実験動物では腺腫などの増加がみられていますが、人では発がん性との関連が報告されておらず、国際がん研究機関(IARC)はヒドロキノンをグループ3(人に対する発がん性については分類できない)に分類しています1)。 体内への吸収と排出 人がヒドロキノンを体内に取り込む可能性があるのは、飲み水や食物などによると考えられます。体内に取り込まれた場合は、さまざまな組織に分布しますが、蓄積性は低いとされています1)。代謝物に変化し、速やかに尿に含まれて排せつされるとされています1)。 影 響 食物や飲み水を通じて口から取り込んだ場合について、環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、体重増加の抑制などが認められたラットの実験結果に基づいて、無毒性量等を体重1 kg当たり1日1.5 mgとしています2)。ヒドロキノンの飲料水中濃度の測定データがないため、公共用水域淡水の測定データ(検出下限値0.00036 mg/L以下)から計算すると、人が口から取り込む量は最大で体重1 kg当たり1日0.000014 mg未満と予測されます2)。これは、上記の無毒性量等よりも十分に低く、飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。なお、環境中のヒドロキノンが食物を通じて取り込まれる可能性は少ないと推定されており、これらを加えてもヒドロキノンを取り込む量は大きく変わらないと考えられています2)。 ■生態影響 環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、ミジンコの死亡を根拠として水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.000070 mg/Lとしています2)。この環境リスク初期評価を行った当時は、検出下限値がこのPNECより高いため、水生生物への影響は評価できていませんでしたが、最近の測定では、このPNECを超える濃度のヒドロキノンが河川から検出されています。
注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。 ■引用・参考文献
■用途に関する参考文献
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