リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート
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作成年: 2012年

デシルアルコール

別   名 デカノール、1-デシルアルコール、1-デカノール
管理番号 257
PRTR政令番号 1-034(化管法施行令(2021年10月20日公布)の政令番号)
C A S 番 号 112-30-1
構 造 式 デシルアルコール構造式
  • デシルアルコールは、農薬の有効成分(原体)として使われるほか、塩化ビニル樹脂の可塑剤、潤滑剤、化粧品に使われる界面活性剤や香料の原料などとして使われています。
  • 2010年度のPRTRデータでは、環境中への排出量は約150トンでした。ほとんどが農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。

■用途

 デシルアルコールは、常温で無色透明の液体で、揮発性物質です。タバコのわき芽抑制剤や非農耕地用の除草剤に用いられる農薬の有効成分(原体)として使われるほか、塩化ビニル樹脂可塑剤、潤滑剤、化粧品に使われる界面活性剤や香料の原料として使われています。甘い香りがあり、食品添加物(香料)としても使われています。
 デシルアルコールは、植物の発育途上の部位に対しては細胞の核膜を破壊することによって枯殺しますが、成熟した部位には影響を及ぼしません。農薬に利用される際は、乳剤に製剤化したものが使われています。タバコ畑で使われるほか、公園、庭園や駐車場などで一年生雑草の駆除のため使われています。
 このほか、デシルアルコールはアーモンドの花やオレンジの精油などにも含まれています。

■排出・移動

 2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約150トンが環境中へ排出されたと見積もられています。ほとんどが農薬の使用に伴って排出されたもので、ほとんどが土壌へ排出されました。この他、化学工業などの事業所から廃棄物として約32トンが移動されました。

■環境中での動き

 土壌へ排出されたデシルアルコールは、土壌に吸着され、主に微生物によって分解されます1)。また、湿った土壌からは揮発することによっても失われると考えられます1)。水中に排出された場合は、粒子などに吸着されると考えられますが1)、微生物によっても分解され、実験では12時間で29.3%が分解されたと報告されています2)。大気中へ排出された場合は、化学反応によって分解され、4.2〜42時間で半分の濃度になると計算されています2)

■健康影響

毒 性 デシルアルコールは、ウサギの眼及び皮膚に対して刺激性がみられたとの報告がありますが3)、人に対しては、デシルアルコール3%を含むワセリンは皮膚に対する刺激を示さなかったと報告されています4)
 なお、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、食品の香料として口から取り込まれる量は安全性に問題を生じるレベルではないとしています5)

体内への吸収と排出 人がデシルアルコールを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水、呼吸によると考えられます。現在のところ、体内へのデシルアルコールの吸収と排出に関する知見はありません。

影 響 河川などからデシルアルコールは検出されていますが、人の健康への影響を評価できる情報は現在のところ報告されていません。

■生態影響

 環境省の「 化学物質の環境リスク初期評価」では、藻類の生長阻害を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.00029 mg/Lとしています2)。このPNECを超える濃度のデシルアルコールが河川から検出されており、環境省では詳細な評価を行う候補物質としています2)

性 状 無色透明の液体   揮発性物質
生産量6)
(2010年)
国内生産量:約170キロリットル
排出・移動量
(2010年度
PRTRデータ)
環境排出量:約150トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%)
事業所(届出) 0 大気 0
事業所(届出外) 0 公共用水域 0
非対象業種 100 土壌 100
移動体 埋立
家庭 (届出以外の排出量も含む)
事業所(届出)における排出量:約0.28トン 業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
事業所(届出)における移動量:約32トン 移動先の内訳(%)
廃棄物への移動 100 下水道への移動
業種別構成比(上位5業種、%)
化学工業 100
食料品製造業 0
PRTR対象
選定理由
生態毒性(藻類)
環境データ

公共用水域

  • 要調査項目存在状況調査:検出数37/50地点,最大濃度0.0014 mg/L;[2001年度,環境省] 7)

底質

  • 化学物質環境実態調査:検出数0/27検体(検出下限値1 mg/kg);[1979年度,環境省]8)
適用法令等

注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。
※本物質の生産量は2010年農薬年度(2009年10月〜2010年9月)のものです。

■引用・参考文献

■用途に関する参考文献

■適用作物に関する情報