![]() [この文書を印刷される場合はこちら(PDF)] 作成年: 2012年 |
2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール
■用途2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールは、常温で無色または白色から淡黄色の、水に溶けにくい固体です。各種プラスチックの酸化防止剤、天然ゴムや合成ゴムの老化防止剤として使われたり、酸化防止剤として食品添加物や家畜用飼料に使われています。また、家庭用殺虫剤の補助剤や不快害虫用殺虫剤としても使われています。 ■排出・移動2010年度のPRTRデータによれば、わが国では1年間に約31トンが環境中へ排出されたと見積もられています。主に化学工業などの事業所などから排出されたもので、主に大気中へ排出されたほか、土壌などへも排出されました。家庭用殺虫剤などの使用に伴って家庭からも排出されました。この他、化学工業などの事業所から廃棄物として約43トン、下水道へ約0.001トンが移動されました。 ■環境中での動き大気中へ排出された2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールは、化学反応によって分解され、3.5〜35時間で半分の濃度になると計算されています1)。水中に排出された場合は、化審法の分解度試験では微生物分解はされにくいとされています1)。 ■健康影響毒 性 ラットに体重1 kg当たり1日100 mgの2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールを、餌に混ぜて与えた二世代試験では、親ラット及び生まれたラットに、体重増加の抑制や甲状腺の機能亢進が認められました1)。 体内への吸収と排出 人が2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールを体内に取り込む可能性があるのは、食物や飲み水、呼吸によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、マウスの実験によると、代謝物に変化し、7日間で26〜50%が尿に含まれて、41〜65%がふんに含まれて、6〜9%が呼気に含まれて、合計で96〜98%が排せつされたと報告されています1)。 影 響 食物や飲み水を通じて口から取り込んだ場合について、環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、体重増加などが認められたラットの実験結果に基づいて、無毒性量等を体重1 kg当たり1日25 mgとしています1)。飲み水の測定データがないため、公共用水域淡水の測定データを用い、食物中濃度の実測値とあわせて計算すると、人が口から2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールを取り込む量は最大で体重1 kg当たり1日0.0017 mg程度と予測されます1)。これは上記の無毒性量等よりも十分に低く、食物や飲み水を通じて口から取り込むことによる人の健康への影響は小さいと考えられます。 ■生態影響環境省の「化学物質の環境リスク初期評価」では、ミジンコの繁殖阻害を根拠として、水生生物に対するPNEC(予測無影響濃度)を0.00069 mg/Lとしています1)。過去の測定では、このPNECを超える濃度の2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールが海水域から検出されており、2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾールを詳細な評価を行う候補としています1)。
注)排出・移動量の項目中、「−」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。 ■引用・参考文献
■用途に関する参考文献
|